北イタリア・スケッチの旅

平成18年6月12日〜6月21日

平松  久 記

 6月中旬、イタリアの北部、湖水地方とドロミテ山塊を回って、ヴェネチアに達するスケッチ・ツアーに参加しました。
 このツアーは、独立美術協会の乙丸哲延画伯を講師として、ほぼ毎年行われているもので、私は連続8回目の参加です。
 今回の団員は、女性10人、男性3人、それに乙丸先生と添乗員の合計15人でした。
 幸運にも、全行程天気に恵まれ、心行くまでスケッチでき、19枚描いてきました。

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1  地理的な行程は、左の[地図1]のとおりです。

[6月12日:月]
 成田13時発のアリタリア航空でミラノに飛びました。飛行時間約12時間半。現地時間18時半にミラノ・マルペンサ空港に到着。気温33℃。
 空港ではアラブ系乗客の入国審査が厳しく、彼らの一団が我々の前にいたので、かなり待たされました。日本人、とくに、日本のツアー団員は無審査同様で入国でき、ありがた味を味わいました。
 専用バスで、ミラノの東方約70kmに広がる湖水地方最小の湖の一つであるイゼオ湖の町、イゼオに向かい、21時、湖畔のホテルに到着しました。
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 イゼオ滞在。9:00〜18:00イゼオ湖のモンテ・イソラ島に遊覧船で行く。イゼオでスケッチ3枚、モンテ・イソラ島で1枚。

 [絵画2]は、朝、ホテルの部屋の窓からホテルの脇を通る道路を描きました。遠くに見えるのはアルプス連山です。
 [絵画3]は、湖に面したホテルのテラスから、前に見える小さな岬の建物を描いたものです。

 9時過ぎ、この湖に浮かぶモンテ・イソラ島を探索するため、ホテルを出発、3キロほど離れた船着場まで歩きました。
 船着場はこの町唯一の繁華街で、プチホテルや飲食店が密集していますが、その脇は木立ちや花壇がある広い公園になっていて、湖面には白鳥などの水鳥が多く遊び、水中には小魚が泳ぎ、非常に長閑な情景です。
 遊覧船が出るのに、1時間ほど暇があり、バーの店先から1枚〔絵画4〕、船着場で1枚〔絵画5〕、スケッチしました。
 [写真6]は、船着場の遊覧船、[写真7]は、船着場の前の広場で、誰かの銅像が建っています。

 11時に遊覧船出航、約30分でモンテ・イソラ島に到着。湖畔のレストランで昼食。湖の魚のグリルが非常に美味でした。
 漁業と観光の島で、湖畔には[写真8]のように、飲食店や土産物屋が軒を連ねています。
 [絵画9]は、その内の一箇所をスケッチしたものです。正面3階建ての建物に住むお婆さんが見に来て、褒めてくれました。向こうの人は、自分の家を描かれると喜ぶようです。そのうち、左側の褐色の建物の住人、親子3人が見に来ました。    

 16時半、モンテ・イソラ島を出て、イソラに帰りました。今度は、船着場からホテル近くまで、3両連結の小さな郊外電車に乗りました。夕食は鱒のオーブン焼き。
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10 [6月14日:水]
 イゼオ→ドロミテ山塊:オルティゼイ〔昼食〕→カナツエイ
 9:00専用バスでイゼオ出発。オーストリア国境近く、アルプスの一角を占めるドロミテ山塊に行く。途中、スキーのリゾート地オルティゼイで昼食をとり、スケッチ1枚。17:00標高1,234mのカナツエイに到着。

 今日は、イゼオ湖からオーストリアの国境近く、アルプスの一角を占めるドロミテ山塊に向けて出発です。9時に専用バスで、一路東に向け、高速道路を走ります。2時間ほど走ると、[写真10]のような大きな山々が見えてきました。12時半に、スキーのリゾート地、オルティゼイに到着、レストランで昼食後、前に流れる小川のほとりからアルプス連山を望んで1枚スケッチを描きました[絵画11]。
 16時、オルティゼイを出発し、標高1,234mの登山、スキー基地であるカナツェイのホテルに到着。暖房のボイラーが故障していて寒い。夕食は仔牛の網焼き、昼食も牛肉でした。
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 カナツェイ滞在。スケッチ5枚

 今日はカナツェイ滞在。希望者は近くのボルドイ山(2,950m)に登りましたが、私は体調が優れず、当地に留まり、スケッチを5枚描きました。
 カナツェイは山麓の斜面に横に長く広がっており、中央に広い道が通っていて、プチ・ホテル、飲食店その他いろいろな店が並んでいます。オフ・シーズンのため、観光客は多くありません。
 [写真12]は、この中心地の一角、
 [写真13]は、ここから標高3,179mのサッソ・ルンゴ山を見た写真、
 [写真14]は、その左側に聳えるカティナッチョ連峰の写真です。

 次は、スケッチの数々。
 [絵画15]は、比較的低い所から、南方のマルモラーダ山(3,343m)を見たもの、
 [絵画16]は、比較的高い場所から、同じようにマルモラーダ山を見た風景です。
 [絵画17]は、正午頃、ホテルの部屋のテラスから、西北に聳えるサッソルンゴ山を、
 [絵画18]は、高台から同じ山を描いたものです。
 また、[絵画19]は、その右側に聳えるボルドイ山のスケッチです。

 夕食は豚の脛肉の煮込み、山地では肉料理が続きます。
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20 [6月16日:金]
 カナツエイ→コンティナ・ダンペッソ→ミズリーナ湖→ヴェネチア
 9:00専用バスでホテル出発。山道を辿り、ドロミテ山塊の一大リゾート地コンティナ・ダンペッソで昼食。近くのミズリーナ湖でスケッチ1枚。山を降り、ヴェネチア本島のローマ広場から専用ボートでリド島へ。18:40ホテル到着。

 今日は、カナツェイから山を降りて、南のヴェネチアに行く日です。9時に専用バスでホテル出発。ボルドイ峠に向かいました。
 途中、[写真20]のような山が連なって見えます。
 [写真21]は、ボルドイ峠、立派なレストハウスがあり、奇山があちこちに聳えています。昨日、有志の人たちがここからケーブルカーでボルドイ山へ登りました。

 12時に、ドロミテ山塊の心臓部ともいえる一大リゾート基地、コルティナ・ダンペッツォに到着しました。
 落ち着いて美しい町並みで、雄大な山々に囲まれています。デジカメの不調で、ここの写真が、全部、取り出し不能になってしまいました。小奇麗なホテルのレストランで昼食、チキンのローストでした。
 13時ニコルティナ・ダンペッツォを出発、トレ・クローチ峠[写真22]とミズリーナ湖で一服。この湖は人気があり、観光地化が進んでいるということですが、牧歌的な雰囲気が十分残っていて、湖面遥かにトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(2,999m)が聳えています。
 [絵画23]は、20分ほどでこの山をスケッチしたものです。
 17時半、ヴェネチア本島のローマ広場に着きました。ヴェネチアは本土と少し離れた本島とが鉄道と道路で結ばれています。車は鉄道の駅と運河を隔てて隣接するローマ広場の駐車場までで、ここからは船で各地は行きます。本島の真ん中を逆S字状に大運河(カナル・グランデ)が流れ、無数の小運河が縦横に走っています。本島の周りには、ジューデッカ島、リド島、ムラーノ島、ブラーノ島、レ・ヴィニョーレ島、トルチェッロ島などの島が点在しています。我々は、本島の混雑を避け、リド島のホテルに投宿しました。
 20時、ホテルの近所のレストランで夕食。イカのフライでした。イカは良く食べるそうです。
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24 [6月17日:土]
 ヴェネチア本島滞在。ブラーノ島旅行。
  8:30〜16:30 専用ボートでブラーノ島へ。スケッチ2枚。
  18:00〜22:00 ヴェネチア本島サン・マルコ広場とアカデミア美術館周辺散策。

 ブラーノ島へスケッチ小旅行。この島は、カラフルな色合いの家並みが続く漁師の島で、レースでも知られています。
 [写真24]は、運河に面した色鮮やかな家並みを写したものです。これは、漁師が沖から帰ってくる際に、我が家をいち早く見つけるため、鮮やかな色を塗ったのが始まりといわれています。
 [写真25]は、島のメインストリートでレース編みや仮面などの土産物屋が連なっています。ここでも鮮やかな色の家並みが続いています。
 [絵画26]と[絵画27]は、このメインストリートが運河と合流した所で描いたものです。
 [絵画26]は、メインストリートに面した土産物屋、左が仮面で右がレースを売っています。
 [絵画27]は、その真後ろの運河に面した風景です。
 なお、[写真28]は、船着場の近くにある教会の塔です。この写真では傾いているのは余り目立ちませんが、海側から見るとかなり傾いています。
 16時に専用ボートでブラーノ島を離れ、1時間後にリド島のホテルに帰りました。

 18時すぎ、ヴァポレットと呼ばれる水上バスで本島のサンマルコ広場に向かいました。この水上バスは10系統近くあり、次から次に出ていて便利です。72時間乗り放題の乗船券が25ユーロ(邦貨約3,700円)で,乗りまくりました。
 [写真29]は、サン・マルコ広場、向かって左から二人目が乙丸先生、右から二人目が私です。後ろに見えるのがサン・マルコ寺院です。
 大運河の対岸のアカデミア美術館近くのレストランで夕食。魚料理が豊富です。
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30 [6月18日:日]
 ヴェネチア本島、アカデミア美術館付近とリアルト橋
  8:30〜14:00 アカデミア美術館見学と近くでスケッチ1枚。
  14:00〜16:30 リアルト橋でスケッチ1枚。

 9時の水上バスで、本島のアカデミア美術館脇の船着場に行きました。
 一行は、ほど近い、サンタ・マリア・テッラ・サルーテ教会に向かいましが、私は、せっかくの機会ですので、ある団員と二人でアカデミア美術館を見学しました。
 この美術館は、14〜18世紀のヴェネチア派絵画の集大成とも言える美術館です。入場料6.5ユーロ(邦貨約900円)。1時間位しか時間が無いので、必見ベスト8といわれる絵を重点的に見て歩きました。
 その後、近くの小運河の辺から大運河に並ぶ建物をスケッチしたのが[絵画30]です。
 また、大運河に架かるアカデミア橋の上からサンタ・マリア・デッサ・サルーテ教会とその対岸を撮った写真が[写真31]および[写真32]で、いずれもヴェネチアらしい風景です。

 昼食後、大運河にまたがる最大の橋で、ヴェネチアを代表する風景の一つとされているリアルト橋を見に行きました。
 [写真33]のように、石造りの彫刻や建造物で覆われた立派な橋で、橋上を通る道には土産物屋がひしめいています[写真34]。
 [絵画35]は、橋の袂から描いたスケッチ、
 [写真36]は、これを描いている私です。

 17時頃、水上バスでホテルに帰りました。ご馳走が続いたので、今夜は簡単なサンドイッチで夕食を済ませました。
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 ヴェネチア本島、オルト地区とサンテ・シマ・ジョヴァンニ広場
  8:30〜12:30 マドンナ・デル・オルト教会前の運河でスケッチ1枚。
  一人、迷いに迷ってサンテ・シマ・ジョヴァンニ教会広場にたどり着く。
 13:00〜16:30この広場と近くの小広場で各スケッチ1枚。

 朝9時、水上バスで本島北部のオルトに向かいました。この近くにあるマドンナ・デッロルト教会には、チントレットの描いた「最後の審判」と「黄金の仔牛の崇拝」があることで有名ですが、私は見学せず、前に流れる運河の辺でスケッチをしました[絵画37]。

 一行は、私を残して次の集合地サンテッシマ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会広場に向けて出発していきました。
 スケッチを終えた私は、地図を頼りに、一人で後を追い、途中までは難なく行けたのですが、その先は小さな広場と狭い小路が入り組んでいて、方向を見失ってしまいました。恥も外聞もなく身ぶり手ぶりで聞きまわり、疲れ果てて入ったカフェの女の子に地図を描いてもらってやっとたどり着きました。
 [写真38]のような大きな教会が目印だったのですが、道が狭くて見通しが利かないため、すぐ近くまで行かないと分からないのです。とはいえ、途中では、[写真39〜41]のような、ヴェネチアらしい風景を満喫しました。

 この教会広場に面した小さなバーで昼食を食べましたが、メニューはピザとパスタの、しかも一種類ずつしかなく、いずれも美味しいものではありませんでした。
 食後、この広場から、脇を流れる運河越の風景[絵画42]と近くの小広場のカフェ[絵画43]をスケッチし、夕方の水上バスでリド島に帰りました。

 ヴェネチア最後の夕食はホテル近くのレストラン、ルーム貝と白身の魚のソテー。ヴェネチアは海産物が美味しい所です。
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   [6月20日:火] ヴェネチア→ミラノ→〔成田〕

 いよいよイタリアに別れを告げて帰国の日。9時に専用ボートで本土にあるマルコポーロ空港に向かいました。途中、ガラスの島ムラーノ島の真ん中を流れる運河を通過し、約1時間で空港に到着。アリタリア航空機でミラノに飛び、同じくアリタリア航空で15時半ミラノ・マルペンサ空港離陸。翌21日10時成田空港に着きました。

 全行程、天気に恵まれ、何一つ、トラブルにも見舞われなかったことが幸いでした。スケッチの幾つかは油絵にして、OB会作品展でご披露できると思います。

 [スケッチ・データ]
 絵具:ホルベイン透明水彩絵具/紙:キャンソンモントヴァル(フランス)、中目、300g/u、24×32cm/筆:セーブル/鉛筆:三菱ユニ2B;三菱ダーマトグラフ/フェルトペン(耐水性水性):パイロット・ドローイング・ペン0.5,0.8;サクラ・ミクロン0.5
 絵画4,15,17,19,23,42:鉛筆と透明水彩
 絵画2,3,9,11,18,26,27,30,35,37,43:フェルトペンと透明水彩
 絵画16:ダーマトグラフと透明水彩
 絵画5:鉛筆

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