第32回彩曜展(全日本美術協会主催)

奥 宗治さんが出展

平成24年3月1日(木)〜5日(月) 東京・浅草公会堂1階展示ホール

「天守への階段(安土城址)」F10号 油彩画

   第32回彩曜展を見て

 折角なので、近隣の浅草寺仲見世通りのにぎわいを肌に感じながら、公会堂の展示ホールに一歩足を踏み入れると、そこは荘厳なる絵画展示70点余の世界。
 F6〜F10サイズの大きさに統一された、写真を含む絵画のレベルの高さに正直言って驚いた。

 奥 宗治さんの作品は、油彩画「天守への階段(安土城址)」F10号である。
 安土城は16世紀の戦国期、織田信長が天下統一のための拠点として築いた城で、本能寺の変後、間もなくして原因不明で焼失し廃城となっている。
 作品「天守への階段」を言葉で表現すると、「木々に囲まれた荒廃した石の階段を上り、突き当りの石壁を右に曲がると、そこは今は無き天守閣の跡・・・」となるだろう。
 作品を見ると、左と右に位置している木々は、いずれも天守跡方向からの強い風に耐えている。

 作者の言をお借りすると、「荒廃した石段は時代の積み重ねであり、武将達は何を思いながらこの石段を上ったのか。そして今は無き絢爛たる天守閣は、武将達の野望とエネルギーの塊であり、これを風という形で表現したかった」とのことである。
 石の「静」と、木々の「動」が、心憎いばかりの構図と色彩で表現されており、確固たる石が「動」をしっかりと支えている。歴史が浮かび上がってくるような描写である。

 奥 宗治さんは、平成23年に全日本美術協会の準会員に推挙された。
 本格的な油彩への取り組みは10年余とも伺っており、ますますのご活躍をお祈りします。 
                                  (松村俊二 記)
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