第51回全展 奥 宗治さんが準会員努力賞
東京・上野の東京都美術館
平成25年8月21日〜30日
奥さんの作品 「大通寺山門(長浜)」 F100号 油彩画
第51回全展を観賞して
<感想文>
昨年、増築・改装されて広く新しくなった上野の東京都美術館の会場で開催されている第51回全展(全日本美術協会)に出品している奥 宗治 さんの作品を拝見して来ました。
作品は、審査で各種受賞に選ばれて並ぶ受賞作品と共に、入口近くに展示されていました。
昨年と同じくF100号の油彩画の大きい作品でした。
長浜の大通寺の山門を院内から見上げた構図で、「大通寺山門(長浜)」とありました。
側面より前に2棟の建物を置いて描いた二層造りの山門は、雄大な姿で二階および一階の屋根の型も美しく、バランスの良い姿で、二階の 木製手摺りとの調和もピッタリで、周りを威圧するかのように 大きく美しい姿の寺院建築を表現しています。
少し雲のある青空を背景に、光る二層の瓦屋根と、原画では、軒裏の木組みの繊細なヒジ木の構造なども、適度の陰影で描かれており、その 対比もよく、寺院建築の持つ、丁重さと重厚さはよく表現されていると感心しました。
実際に現場で見る建造物よりは大きく感じる?のではないかと、大通寺を詳しく知らない小生には見えます。
院内の他の建物、遠くに見える建屋、樹木の姿と共に、人影の全く見えない昼の寺内風景は、静けさの中に当時の寺の権威と歴史をも 感じさせる表現でした。
奥さんのこれまでの作品に記憶する濃い色調の表現とは異なり、当作品の明るい画面色彩は、新しい手法の模索と拝見しました。
結果は 昨年の特選大賞に続き、今年は“準会員努力賞”の受賞で、今後のますますの進展が期待されます。
当日、会場受付係として忙しく動いていた奥さんにたまたま会いましたが、立ち話程度の会話でしたので、少々の感想を書きお送りいたし ます。
(宮武正浩 記)
<出品者ご本人の感想文>
大通寺は、滋賀県長浜市にあり、古くから「長浜の御坊さん」と呼ばれて住民に親しまれてきた真宗大谷派本願寺別院。
昨春、当時大阪に単身赴任中の長男に招かれて、曳山祭りの観賞のため実に20年ぶりに訪れた長浜。
フィルムのことしか眼中になかった往時を家内と懐かしんだものです。気がつけば「御坊さん」の山門をくぐっていました。
後に、この時の印象を油彩画で「SM」サイズに描き、秋の「第24回蔦の会展」(高校の美術部OB会展、渋谷)に出しました。
これが先輩の画伯のお目に留まり、大作に挑戦することを示唆されたのが、今回の大作の契機になりました。
通常、門は出入り口を中央に置く構図が親しまれているのでしょうが、この日の山門は何かしら20年の空白を咎めるように、私を上から威圧して来ました。
この印象を忠実に表現するのは、大屋根を仰ぎ見る側面の構図がふさわしいと気付きました。さらに19世紀の優れた木造建造物の、一糸乱れぬ庇下の木組みが面白く、量感の表現に工夫が必要でした。これがこの作品の誕生噺です。ご鑑賞下さいましてありがとうございました。
全日本美術協会準会員 奥 宗治(記)
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