第54回全展 奥 宗治さんが「全日本美術協会賞」受賞
東京・上野の東京都美術館
平成28年8月21日〜8月30日
<奥 宗治さんの「全展」出品作品を見学して の感想>
案内状をいただき上野の東京都美術館で開催されている第54回「全展」に出品されている
奥 宗治さんの油彩画作品「ガジュマルの樹」を拝見して来ました。
案内状で知る“ガジュマル”という名も、画面に描かれた樹も、初めて見るめずらしい樹木でした。
かなりの樹高であるが、中央部から三つに分かれて太い枝が斜めに伸びる。
枝の下部から数条の細い根(気根)が流れ込む様に束になって地面に達し、
根先は直前で幾本かに分かれて、それぞれがしっかりと土地に喰い込んでいる。
気根は複雑にからみ付き細く又は太く派手?な型になっている。
枝の先には小さな葉が繁っている。
このめずらしい樹木は、その姿から雨量多い熱帯地域の樹と思われる。
お互いにからみ付いた気根は風に強い構造となり防風林や適度に広がり繁る
葉は日除けの役目にもなると思われる。
奥さんが全展で樹木を扱ったこれまでの作品は「生きる」や昨年の「葛藤」など、
森の中の狭い場所に生存する大小の樹木の生きていく戦いの姿を描いたものでしたが、
今回もその流れにあると考えられます。
中央下部の黒く見える空洞は戦いの跡とも見えますし、
外周りの奇妙な姿は勝ち取った後の自信の姿の様にも見えます。
自然の樹木の生存競争が、成長で示すたくましさを表現したシリーズ画は今回も健在の様です。
結果は 出品作品最高賞の「全日本美術協会賞」の受賞の様です。
他の展示作品を 急ぎ足で見て廻りましたが、
○ 主題がある。 謎もある。
○ 構図がよい。
○ 少ない色数で効果的に表現されている。
○ 筆使いが丁寧で、色付けのバランスが良く違和感がない。
○ 明るい画面は見易く、ボリューム感がある。
など 素人の目にも上位作品であることを、十分に理解しながら帰路となりました。
(宮武 正浩 記)
<出品者ご本人の感想文>
ガジュマルの樹
樹高は20m。
実は鳥やコウモリなどの餌となり、糞に混ざった未消化の種子は土台となる低木や岩塊などの上で発芽する。
幹は多数分岐して繁茂し、周囲から褐色の気根を地面に向けて垂らす。
垂れ下がった気根は、徐々に土台や自分の幹に複雑にからみつき派手な姿になっていく。
(中略)気根は当初はごく細いが、太くなれば幹のように樹皮が発達する。
地面に達すれば幹と区別が付かない。
また、成長した気根は地面の舗装に使われているアスファルトやコンクリートなどを突き破る威力がある。
こうした過程で、土台となる木は枯れていく。
その気根から生命力を感じることから「健康」という花言葉がつけられたといわれている。
(以上Wikipediaより転載)
樹木の絵は2012年全展の「生きる」、2015年全展の「葛藤」を発表して、いずれも大きな手応えを感じました。
モチーフは森の中の一組の樹木であり、その姿はより良き環境を求めて相争う苦しみ、
葛藤の痕跡であって、それを人の(私自身の)生き方に重ね合わせた述懐でありました。
樹木の姿が生命の痕跡であるならば、2016年のモチーフ選びに際して、
過去の取材集の中で未だ描いたことの無い画題に遭遇するのではないか?
こう思って10年程前に訪れた屋久島の記憶を訪ね、ガジュマル園にたどり着いたのでした。
早速この樹種について調べ上げ、その特異な能力と強力な生命力を知り、制作意欲が沸くのを覚えました。
テーマは奔放な生命活動、困難を克服するパワーという構想で前2作の忍耐に対して積極果敢な行動をイメージしました。
従って構図は迷わず巨大なXタイプとしました。
審査の結果は「全日本美術協会賞」という本協会の公募展で最も栄誉ある受賞に与り、
この上ない喜びと感謝の気持ちで一杯です。
これも一重に同好の諸氏、諸先輩のご指導の賜物と心より御礼申し上げる次第です。
ご講評頂いた宮武正浩さん、事務局の労をおかけしました門田明徳さんに厚くお礼申し上げます。
2016年9月9日
奥 宗治
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